陳列

Open the grave.

蕎麦

もうすぐ娘の1歳の誕生日だから洋服を見に行こう、シャーリーテンプルとセンスオブワンダーが見たい、ということで半日かけて相模大野まで出掛けて、帰ってきたら7時。

娘はお昼ご飯は夢庵で一口おにぎりとアンパンマンのパンしか食べなかったから(その後授乳もしたけど)、さぞかしお腹がすいてるだろうと思ってバタバタしながら夜ご飯を用意する。サンドイッチとミニトマトと鶏肉と豆腐のハンバーグとベビーダノン。ハイチェアに座らせるなり前のめりになって鷲掴んでムシャムシャ食べる。

私と夫はお蕎麦。帰りのスーパーで生麺の蕎麦とパウチの鴨出汁スープを買ってきてたんだけど、これがよくなかった。

詳細は知らないけど、夫はどうやら蕎麦をスープと一緒に一度に茹でたと思われる。蕎麦のぬめりが汁に溶け出してドロドロしてて美味しくない。生麺だったからか、茹で時間が長かったのか分からないけど、麺もくっついて塊みたいになってて、奥歯で噛むとキシキシする。

私は一口食べた瞬間に、これはマズイと思ったんだけど、夫とは以前も作る料理の味がケンカの発端になったことがあったからなかなか言い出せず、無言でボソボソ食べてるうちにドンドン顔が険しくなり、夫も私の様子が変なことに気付き、あっという間に食卓の雰囲気は最悪に。

夫「…作り直すよ」

私「いい、食べれるから」←この返しが不味いと同義

夫「味濃いね、薄めようか」

私「いや、それだけの問題じゃなくて、麺が…」

一応お湯で割ってみたけど不味いことには変わらず。

夫「やっぱり作り直すよ」

私「いいって言ってんじゃん」

夫「だって機嫌悪いじゃん、もういい、作り直す」

丼をさげて中身を三角コーナーにぶち込む夫。食べ物を大切にする夫がこれをする時は本当に怒っている。

娘「…へっ、へっ、へーん」

ずっと私たちのやり取りをきょとんと眺めていた娘が泣き出す。かわいそう。ニコニコしながらお行儀よくパクパク食べていたのに。私たち夫婦は普段、「楽しいごはんがいいごはん」(リラックマですね)がうちの家訓、などとドヤ顔で言ってるくせに、この場でそれを守れていたのは娘だけ。大人二人は不機嫌を充満させて睨み合って、乱暴な動作で娘を怯えさせていた。

でも、だからってどうすればよかったんだろう。

娘が生まれるまでは、夫の作る料理はそれはもう私とは比べものにならないほどうまかった。凝ったものを作るし、手際も良い。 異変をきたし始めたのは娘が生まれて少し経ってから。3〜4回に一回くらい、首を傾げてしまうほど味の濃いものを作るようになった。 でも一緒に住んで15年近く、私たちの間では料理がうまいのは夫、という絶対的な地位が確立されてしまっていて、違和感を抱く私の方がおかしいのかなとなかなか言い出せずにいたのだけど、私の誕生日に作った豚の角煮がすごくしょっぱくて、私がキレてしまい、それ以来なんとなく料理の味というトピックは緊張感をもって扱うものになってしまっていた。その矢先に、蕎麦。 多分、夫はものすごく疲れているんだと思う。娘が生まれてから基本的にずっと朝は5時起きで、夜は7時まで仕事をして家には8時過ぎに帰ってきて、そのまま娘の世話(食事や片付け、風呂や歯磨き、着替えなど)を手伝ってくれて、娘の寝かしつけやなんやかやが終わったらもう10時。ノンストップでこれだけこなして、その後息抜きにPCいじったりコーヒー飲んだりして寝るのは12時過ぎ。平日5時間も寝てないんだ。何でそんなに早く起きるのかというと、早く帰るためらしい。確かに、10時過ぎに帰ってきても娘寝てるから、娘と触れ合いたければ早く出勤して早く帰るしかない。 私はいくら夜泣き対応がつらい、夜間授乳がしんどい、とか言ってても、なんだかんだで起きるのは8時だしな。ひどいと9時まで寝てる時あるし。細切れ睡眠とはいえ、これで私の方が大変と言うのはちょっと無理がある。 疲労やストレスがたまると味覚もおかしくなるのかもしれない。真っ先にピンときたのはそれだった。検索したら、そういうのは決して珍しくないみたいだ。 この一年、自分の人生で間違いなく一番しんどかったけど、夫はもっとハードだったんだろう。 ここ最近夫の顔が暗い。私に対する受け答えもどことなく壁を感じる。間違いなく、夫の私への愛情は目減りしている。最近ももクロのことで喧嘩したばかりで、今までは絶対に夫の口からは出てこなかった「離婚」の文字が何度も繰り返されていた。あの時も結局仲直りはしたけれど、こういうことを積み重ねていくうちに溝は深まっていくんだよね。もう、感情の交換も状況の共有も何もかもが全て二人だけの間で完結していた頃には絶対に戻れないんだなあと思うと、軽く絶望。